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「……ごめん!」
突然、嵐が奈緒の前に土下座した。ラグに額をつけ、もう一度、ごめん! と叫ぶ。
「さっきは、本当に悪かった! あんな……最低なことして、本当に悪かった!」
「あ、嵐……顔、上げてよ」
びっくりした奈緒は、ひとまず嵐に顔を上げさせようとした。ここに来るまでは、先に謝るのは自分だと思っていたのだ。
奈緒が声を掛けると、嵐はゆっくり顔を上げた。しかし目線は伏せたまま、正座した膝の上で両手を固く握りしめていた。
「マジで、悪かったと思ってる。あんな……レイプまがいのこと……」
嵐の言葉に耳を疑う。
だがそう言われてみれば、確かにひどい仕打ちを受けたのは自分の方だった。
奈緒が嵐を好きでなかったら。
いや――奈緒が嵐を好きだからこそ、残虐な行為だったかもしれない。
奈緒は考え込んで、俯いた。
それを違う意味にとった嵐が、また頭を下げる。
「俺……おかしいんだよ」
「……え?」
「奈緒と……モカちゃんと3Pしてからずっと、変なんだよ」
嵐は低く零した。
「奈緒が可愛いって、前から思ってはいた。初めて会った時から、奈緒って可愛くって構いたくなってほっとけなくて……て思ってたけど、それはずっとダチの延長でしかなかった。……そう思ってたのに……」
今は大事な話をしているはずなのに――奈緒は一人で真っ赤になった。
嵐に「可愛い」と繰り返されて、耳まで赤く染まる。
嵐が自分のことをそんな風に思っているなんて、想像もしたことなかった。
「なのに……大好きなモカちゃんとHしてるのに、奈緒が気になって仕方なかったんだ。夢にまで見たモザイクの向こう側より……奈緒の裸ばっか見てたんだよ、俺……」
気持ち悪いだろ? と訊かれても、それはまったく自分と同じだから、奈緒はなにも答えられなかった。
「だからこの前、モカちゃんのDVDを一緒に見た時、キスした。つうか……あわよくばHしちゃえって……」
「えええっ?!」
「わ、悪かったよ! でも奈緒、俺の下心に気づいたから、俺のこと引っ叩いて追い出したんじゃないのか?」
あの時奈緒は驚いて――いや、奈緒も、モカのDVDに興奮する嵐を見て欲情している自分を、嵐に見透かされたのかと思って焦ったのだ。
奈緒も嵐に、下心を持っていた。
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