思い出

4/12
前へ
/12ページ
次へ
長身でスレンダー、目鼻立ちもくっきりとした美女。 俺の記憶に、彼女のような美女はいない。 見覚えのない女性が、俺の名を呼ぶことに妙な感覚を覚えていると、何かを察したのか彼女は笑いながら話しかけてきた。 「あはは。私、志村聡美よ。……覚えてないよね。私、祐司くんの一個上だし」 「……シムラサトミ?」 名乗られたにもかかわらず、俺の頭のなかに彼女の姿は浮かんでこなかった。 「……ごめん。あんま、覚えてなくて」 「気にしなくていいよ」 彼女が、詫びる俺に対し笑って応えた。だが、ちらりと八重歯の覗く笑顔には、見覚えがあるような気がした。 「祐司くん、こっちに戻ってきたの?」 「いや、今日は仕事で。今はA市に住んでる」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加