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呆然と立ち尽くしていた真樹斗を女性の店員の一人が「お客さん、こっちこっち」と手を引いて木と石でできたカウンター席に座らせた。
カウンター席を触ってみたり、周囲の客の様子を見てみる。
一瞬、オークと目が合ってあちらから睨みつけて来たが、すぐに真樹斗が目をそらす。
オークは「フンッ」と鼻息を鳴らした。
「何飲みます?」
「あ、ええと、俺・・・・・・ここってコスプレ居酒屋か何かですか?」
「おぬし、何をいっとるんじゃ?」
「あ、すいません。メニューは・・・・」
「なんじゃ、初めてかい。」
「あー、どおりで。ここらじゃ見ない顔だと思った。じゃ、とりあえずワインもあるけど、うちのおススメのバッカスっていうミードでいい?それと干し肉と米のスープで。」
「あ・・・・はぁ・・・・・」
(ミード??確か、人類最古の蜂蜜を発酵させて作った酒じゃなかったっけ?つか、俺酔ってるのかな。これ夢?)
とりあえず顔をつねってみるも、夢のような感じがしない。
(ま、いっか。一杯飲んで帰ろう。)
店内のケルト音楽のような曲が、一転して管楽器を使った別の北欧のような音楽に変わった。
木製の樽のようなコップに酒が注がれ、「よいしょ、よいしょ」と声を出しながらもってきたのは数人の小人たちであった。
呆気に取られて見ていると、店員が話しかけてきた。
「お客さん、本当にシロートなのね。小人は私が雇ってるの。仕事くれってうるさいんだから。」
よく見ると店員の耳は横に長く先が尖っており、耳元に金属の耳飾をつけていた。
「お姉さんも、エルフ?」
「そうだよ。まぁエルフでこんな酒場やってるの私たちくらいだけど。」
「なんだ、やっぱり夢か。」
「?」
「ま、いいや。一杯飲んだらもう帰ります。」
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