第三部

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心地よい音楽が流れる中、奥のテーブルでは酒を飲みながらゴブリンたちがカードゲームに興じている。 硬貨をかけているようだ。 その他のテーブルからは楽しそうな話声が聞こえる。 聞き耳を立てるとカウンターの中のエルフと真樹斗の隣に座っている先ほど声をかけてきたドワーフが「ダンジョンで見つけた新種の食材の話」を始めた。 オークは複数のグループが入店しており、「家族の話」や「育児の悩み」を語っている。 先ほど睨んできたオークは一匹狼で来ており静かに食事を続け、野菜の盛り合わせやチーズ、肉の煮込み料理を食べながら酒を流し込んでいる。 カウンターの奥にミイラ男がいたが、魚のパイ包みをつまみにビールを飲んでいる。 音楽を演奏している女性のエルフ三人は宝飾のついた髪飾りやパステルカラーの袖の長い衣装を身につけている。 真樹斗のところへ小人たちが干し肉と米のスープ、それに木製のグラスに入ったミードを運んできた。 「あ、ありがとう」 真樹斗が礼を言うも聞かずに、小人たちはカウンターのほかの客のところへ行った。 鼻腔をくすぐるスープのおいしそうな香り。 木のスプーンでさっそくスープを一口すくって、口内に流し込んだ。 「う、うまい・・・・」 「ふぉっふぉっふぉっ、そうじゃろう。このエルフの酒場、パ・シェイラはワシらドワーフのちょっとした隠れ家なんじゃよ。飯もよそとは比べ物にならないくらい美味いし、酒もうまいのが揃っとるからなぁ。」 「おじいさん、ドワーフだったんですね。いやぁ、このスープ、干し肉からいいダシが出てますね。それに具のほうれん草、にんじん、きのこも甘みや旨みを引き出している。米もやわらかくてお腹に溜まる。」 真樹斗がミードを飲もうと木製のグラスを持ち上げたとき、隣の席から話していた初老のドワーフがグラスを近づけた。 「あ、こりゃどうも」 真樹斗が反射的にグラスを近づけ、歓迎会から始めて16回目の乾杯をした。 「やわらかい甘さが口の中に広がりますね。スープと合わせたら?・・・・うんスープの味や塩気ともミードがばっちりマッチ。」 「ワシらはナルベスカから来たんじゃが、お主は面白い格好をしとるのう。どこかで見たことがある格好じゃが、どこから来たんじゃ?」 「あ、俺は○×県からです。何かここに来たのもどうやって説明したらいいか・・・・」
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