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「実は野上さんの好きなガトーショコラのホールケーキ残しておいたんです。いつもお店では切って並べてしまうのですが」
「えっ…う、嬉しいですけど急にどうして…?」
「あ、やっぱり野上さんわかってないですね」
ふふふとおかしそうに、しかし楽しそうに笑う姿に、僕は緊張と困惑できっと今変な表情になっているだろう。
「今日はクリスマスですよ」
「あ…」
すっかり忘れていた。
「12月に入ると街の装飾でクリスマスを思い出すけど当日になるころには見慣れた風景になってしまって、つい忘れちゃうんだよなぁ」
「野上さんらしくてなんだか安心しました。ごめんなさい」
「いやいや、むしろこんなに素敵なケーキまで用意してくださって感謝しかないですよ」
僕の好物を覚えてくれていて更に、店には置いていないガトーショコラのホールケーキを作ってくれたことが非常に嬉しい。なんて幸せなクリスマスだ…とだらしなく口元を緩ませてしまう。頭の中で赤い帽子を被った髭のおじさんに感謝の気持ちを込めて両手を合わせておく。
お布施お布施と、せっせとカバンから財布を取り出すと彼は掌をこちらに向けて「大丈夫です」と言う。
「えっいやそんなわけには」
「これは僕がしたくてしたことですから」
「いやいやいや!」
僕は絶対に譲らないと必死に首を横に振ると彼は困ったように笑う。そして、
「じゃあ僕のわがままを一つ聞いてもらえませんか?」
ああ、困り顔も素敵だ…じゃなくて
「も、もちろん!僕にできることならなんでも!!」
「ありがとうございます。では今日この後ご予定は入っていますか?良ければ一緒にこのケーキを食べませんか?」
サンタクロースはまだ僕にプレゼントを用意してくれているらしい。
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