13人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご家族には説明してある。
だが…“彼等”は昨日までのお前と同じように、
なにも知らずにあのベッドの上で眠ったまま、ここを“全て”として生活している。
そのまま目を覚ましてしまうには、この現実はあまりに酷だ。だから…」
「だから!この馬鹿みたいな事実を、俺に突き付けて歩けって?」
こんな気持ちで親父に目を向けたのは初めてだ。
「どっちにしろ酷だろうが…。」
最後まで言えた自信はない。
これは全て、俺のせいなのだ。
俺の為に作られた世界に、その人達を巻き込んでしまった。
それはわかっているのに、この仕事を俺に任せると言った親父のことが許せなかった。
“一緒にやろう”と言ってくれないことが悔しかったんだ。
そんな気持ちで睨み付けたって、長くは持たない。
俺の視界で、
親父はあっというまにゆるゆると揺れて、瞬きと同時に溶け落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!