彼の日常を壊すということ

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────名前をなくしてしまった二人には、新しい呼び名が必要だ。 それも、本当に消えてしまうまでの、少しの間だけなのだが。 記憶に大きな混乱が起きないようにと、“作られた”人物は、段階的に消えていくと聞いている。 そして完全に忘れてしまうと。 「忘れるって…消えてしまうのは俺達だって同じだろう?そんな必要ないんじゃ…。」 そこで知らされたんだ。二人と、自分達のなにが違うのか。 それは、“実在か否か”…だ。 「そんな!俺達も消えるって…」 「ああ、それは本当だよ。 私達は“実在”するというだけで、ここではデータなんだからね。」 それこそ混乱しそうなこの話は、俺の頭が追い付くのも待たずに、淡淡と続けられたのだった。
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