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「もしかして、鳥居さん....演劇部に入ってるの?」
答えない。
「楽しそうだね。」
「....楽しいよ....。」
その返事は、小さかったが刺々しさのない優しい声だった。
「芝居、好きなんだ。」
「うん、好きだよ。」
一瞬の会話だけど彼女のことが少しだけ分かった気がした。
鳥居さん、ものすごくいい子なんだ。
いつも表情は怒っているのに、目の奥は何故か辛そうで無理をして自分を作っているかのようだった。
入学当初から喋り掛けようとした人たちは何人か見掛けた。
だけど一見、喧嘩腰な口調であなたたちとは連(つる)みませんというスタンスなのでその内、誰からも相手にされなくなってずっと独りぼっちだった。
なんだこいつ?みたいな感じで皆から無視されていたが、本人が皆に対してそうしているので可哀想とは私も思わなかった。
いつも独りで目立つから、よく視線がいくし、自ら独りになってるわりには全然楽しそうでもない。
笑った姿も知らないし、どちらかというと暗くてしんどそう。
鳥居さんが人と紐(ひも)づくことを嫌忌しているのには自分の意思と違って何か深い理由があるのではと感じるように私はなっていった。
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