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「瑞穂は初心者なんだから、手加減してやれよ。」
「うるせえな分かってるよ。」
うるせえとかふざけるなとか粗略な掛け合いをしているわりに、胸ぐらの掴み合いにもならず、いつも数分後には肩を組んで歩いているのだから、二人の仲の良さにはいつも微笑ましく感じてしまう。
それもそうだよね。
私たち、幼稚園から一緒なのだ。
親友の中の親友だよ。
今日で中学生活最後の夏休み、しかも最終日を迎えるんだ。
来年からは高校生。
少し大人に近づいたという意味で嬉しくはあるが、別の理由で寂しくもなる。
「綾乃、あっちに行ってみないか?」
良樹に声を掛けられて、潜思していた脳が矢庭に遮断された。
「うん。そうだね。」
断る理由もなかったので、私は二つ返事で良樹の背中についてその場から離れた。
風輝たちはしばらく格闘ゲームで遊んでいるだろうから、私と良樹はささやかな暇を持て余す。
それなら突っ立っているより探索している方が良い退屈つぶしにはなりそうだ。
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