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風輝は瑞穂を見ることなく、キビキビと足早に歩いた。
瑞穂はハイヒールの重い足を必死に動かして、風輝の背中に追いつこうとした。
少し小走りになるぐらいで、やっと風輝のペースについていける程、彼の足は早かった。
振り向いてくれないし、話し掛けてもくれない....。
それどころか、女の子の歩幅に合わせて、歩こうという気遣いや優しさも伝わらなかった。
風輝じゃない、こんなの....。
どうしてこんなにもピリピリしているのだろう?
瑞穂の知る風輝はここには居なかった。
「ねえ、風輝、ごめんね....。もしかして今日、予定があったのに無理して私に合わせてくれた?」
瑞穂は勇気を出して、恐る恐る彼に訪ねてみた。
風輝とは子供の頃からの付き合いなので、口喧嘩もそれなりにしてきたが、抗えないような男らしい強さ、おぞましさを感じたのは今日が初めてのことだった。
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