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三田蓮1
メモの文字、そして中身。
頭の中に浮かんでいた像は、自然と女になっていた。
「もしもし……」
だからこそ、聞こえた言葉に驚いたのだ。
「おい、芹沢」
低く太い、明らかな男声であった。
記憶のない三日間を除けば、聞いた事もない。
「えっ、あの……あなたは……」
「はぁ?」
男は電話の向こうで調子の外れた声を発し、少しして納得したように喋りだした。
「そうか、そうか。上手くいったか」
「なんの事です?」
「だから言ったんだ、ほんとにするのかって」
それ見ろとばかりに責められる。全く会話にならない。
前方ではつららが仁王立ちしていた。
早くしろと目が言っている。
電話の向こうからは溜め息が短く聞こえた。
「まあ俺の事は気にするな、お前の知り合いさ」
いや、知らない。例の三日間の話なら別だが。
「望んだのはお前で、決断したのもお前だからな。俺は悪くないし、あいつも悪くない」
「はあ」
あいつ、というのはあのメモの主だろうか。
一本の糸に縋ろうと、なんとなくそんな事を感じてしまう。
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