三田蓮1

3/3
前へ
/35ページ
次へ
 目的のショッピングモールが目前に迫った。外からでもクリスマス商戦真っ只中なのが見てとれる。  吸い込まれていく客は、家族連れやカップルがほとんどだった。  現におれとつららの周りを歩くのも、そういった顔ぶればかり。  赤信号で立ち止まると、つららは横目を寄越して口を開いた。 「……マジなの?」 「今の所はね」  自分でもよくわからず、曖昧な返事しかできない。 「ふーん……」  彼女の視線はついと前へ戻る。 「病院にでも行けば」  それは無関心から言い放った言葉なのか、それとも裏に心配が隠れているのか。  関係ない人が聞けばきっと判らないだろう。 「あとで」  まったく、つくづく名前の似合わないやつだ。 「さ、行こっか」  信号が青になる。  雑踏に紛れてショッピングモールを目指した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加