門一1

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門一1

 サンタだらけだ。  ショッピングモールの自動ドアをくぐり、最初に抱いた感想である。  カフェ、靴屋、書店、携帯ショップ。エトセトラ。  いたる店舗に「そのお店で最もかわいい店員」らしき人物が立ち並び、客寄せに精を出している。  手作りのプラカードを持って笑顔を振りまいているサンタもいるかと思いきや、その後方で小さな子に風船を手渡しているサンタも見えた。 「サンタ多すぎない?」 「今、同じことを思ってた」  意外性のないクリスマス商戦戦略が一か所に集まってしまえば、意外性のないクリスマス商戦戦略のショッピングモールができあがる。まさにその縮図であり、つららもどこを向いていても目に入ってくるサンタの群れに狼狽していた。  だったら天井は、と上を向いたら、風船のサンタが監視カメラのように僕らを見下ろしていた。  ここはサンタの国か。
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