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東雲旭1
『夢を叶えに』、『家とは反対方向の電車』に乗った俺は一体どこへ行ったんだ。話を聞けば聞くほどわからなくなってゆく。
もう一度電車に乗ってみれば何かを思い出すことがあるのだろうか。ぐるぐると混乱した頭で沿線に続く駅を思い出してみる。
だが駅より向こうは街の中心へと伸びている。そこからは更に多方面へと電車の乗り継ぎが出来るうえ、街にあるのはおびただしい人の波にビルの海。どこへ向かったのかなんて今の俺では到底見当もつかなかった。
改めて感じた底の見えない不安にぶるりと体が震える。
「マジでどうしたんだよ? お前大丈夫か?」
気付けば目の前にいたそいつが眉を潜めながらもどこか心配そうに俺をのぞき込んでいた。
そりゃそうだ、俺だって自分が何をしていたかなんて聞いてくる奴がいたら同じ反応になるだろう。頭でも打ったのかと。病院に行けよと勧めるかもしれない。
……やはり、一度診てもらうべきなのだろうか。
「……あ、ああ……悪い。なんかちょっと記憶がこんがらがってさ。有り難う、お陰で思い出したよ、食いたかったケーキ食べに行った日だ」
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