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野宮有1
目が覚めたときに感じた違和感と、俺の知らない誰かからのお詫びの品。
本来ならコーヒーでも飲みながらじっくり考えるべきかも知れない事柄だ。
しかし少しばかりの硬直の後、俺ははっと我に返る。
今はそんなことよりも重大な、なによりも早急に解決すべき問題が目の前に立ち塞がっている。
要するに、遅刻である。
それもここから待ち合わせ場所の駅まではどう急いでも15分ほどはかかるため、計30分の大遅刻である。
そしてもっと深刻に言うならば、怒ると俺の精神と財布に深い傷を負わせる労力を厭わない、時間に厳しく少しだけサド気味な幼なじみを、用事があってこっちから呼び出したにも関わらず30分以上も待たせているのだ。
俺は身に覚えのない謝罪文だけを念のためコートのポケットに仕舞い込み、弾かれたように安アパートから駆け出した。
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