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赤羽道夫1
駅にたどり着いたとき、待ち合わせの相手――幼なじみの雪田つららは売店の横でスマートホンをいじっていた。
「遅れて悪い」
声をかけると、
「遅い!」
細い眉を吊り上げて、おれをにらみつけた。
「一樹(イッキ)がどうしてもっていうから、承知したのに」
「すまん。ちょっと事情があって」
おれは平謝り。
今日、11月20日に――わざわざ日時を指定してまでつららに付き合ってもらったのには理由があった。
クリスマスプレゼントを買おう、と思っていた。大学のサークルの先輩にお世話になっているので、なにかお礼をしたかったのだ。
ところが、二十歳の女性にどんなものを買ってよいかさっぱりわからず、雪田つららに協力してもらうことにしたのだ。その代り昼ごはんをおごる、という条件で。
つららのほうも、テレビで見た牛たんお好み焼きのお店に行ってみたいのだが、どうも一人で入れるような雰囲気の店でなかったし、友人は興味ないみたいで、そこにこの話が舞い込んできたから渡りに船だった。
「事情?」
つららは怪訝な表情。
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