赤羽道夫1

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 ICカードで自動改札を通ってホームに進みながら、おれは訊いた。 「実はおれ、この三日間の記憶がないんだ。なにか知らないか?」  つららは深いため息をついた。 「もっとマシな言い訳ないの?」 「信じられるわけないよな……おれだって信じられない」  黄色い線の前で立ち止まって電車を待つ。 「三日間、あんたになにがあったなんて、そんなこと、わたしが知るわけないじゃん」  ひんぱんに連絡をとっているわけでもないから、わからなくて当然だろうが、もしかして、と思ったのだ。三日間眠っていた? そんな単純なことならいいが、そんなばかな……。  気になるのが、アパートの玄関ドアに下げられていたレジ袋だ。あれがいつからそこにあったのかはわからない。メモに書かれていた昨日とは、11月17日か、18日か、19日か……。  駅までの道のりでスマホの記録をあたってみたが、メールのやりとりもなく、SNSにもログがない。ま、滅多にメールをしないし、SNSだってほんのときたまのぞきにアクセスするだけなので、なにも記録がなくてもおかしくないのだが。  電車到着のアナウンスが流れ、シルバーメタリックの車体がホームに入ってきた。
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