汗水、泥水の先の……笑顔

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艶やかな黒髪は、ツインテールだった。 「こんな時期に転校してきましたが、残りの数ヵ月よろしくお願いします」 白い頬は緊張からか薄く赤に染まり、ぺこりと頭を下げるとツインテールがぴょこんと跳ねる。 デザインの違う制服のセンスがこの辺の高校じゃない事を伺わせ、またそれが似合うから自然と注目を集めた。 たった数日で転校生はクラスの中心人物になった。 同じ年とは思えないくらいのしっかり者で、僕ら男子は高校最後の思い出に悪ぶる事も許されなかった。 「ちょっと男子!」 クラス委員の女子がいつものように声を張り上げる。 「放課後毎日さっちゃんを呼び出すの、やめてよ!」 毎日呼び出されてたのか、驚いた。 「さっちゃんは迷惑してんの!」 それは迷惑だろう。転校してきてまだ数日、しかも数ヵ月後には卒業式が控えているし。 「それに、さっちゃんには婚約者がいるんだから!」 クラスの女子のほとんどが集まって、教室を男子と女子で二分する。 この年で婚約者とは……未来が安定しているというか、今時婚約者なんて存在するんだなぁ……。ドラマなら波乱万丈だろうか。
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