汗水、泥水の先の……笑顔

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転校生は、黙っていた。 だから、ではないけど、僕も口を出さなかった。 ふいに、目が合った。 「私たちこれからみんなでカラオケだから!」 女子達はそう言い放ち、教室を出て行った。そんな女子達に痺れを切らした男子の一部が声を張り上げ「これから俺らはボウリングだ!」と何故か僕も引きずられてしまう。 ボウリング場へ向かう途中、僕は通りすがった公園に足を向けた。 けして広くはない公園だ。でも、短い滑り台の下に立派な砂場があった。 「さっちゃぁん、なにしてるのぉ?」 「汚れるよ、早くカラオケ行こうよー」 そんな声が聞こえてきて、僕は公園の中を走り出した。 そして、制服の上着を脱ぎ、腕捲りをするのも煩わしく、転校生の前に出来上がりつつあるお山に砂を掛け、大きく作り上げていく。 「リョウヤ! 水をかけると頑丈になるぜ」 誰かが忘れていったのか、小さなバケツを拾った男子のひとりが水をくんできた。 そして、クラスの男女合わせて二十人が見守るなか、砂場に山ができた。 僕は山を目の前に、立ち上がる。 転校生も同じように立ち上がった。 「僕は、このトンネルが開通したら……」
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