第一章 プロローグ

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感慨深い思いで、このギルドハウスの中を見渡す。 隣にいるギルドマスターも、俺と同じことを考えているのか。 ようやくの思いで、この建物を手にすることができた喜びを、しかし口にすることはなかった。 「いろいろ、ありましたね……」 俺は彼女に、あるいは自分に向けて呟く。 本当に、俺達にはいろいろありすぎた。 「そうだね。あたしの仕事はこれでおしまい。ねえ、白(しろ)君。その、少し目を瞑ってくれない?」 「え?」 ギルドハウス建設祝いのサプライズか何かだろうか? だとしたら、それは俺の役目ではなかったのか。 俺は自分の気の効かなさに失望する。 「早く閉じてよ」 少しはにかむ彼女。 待てよ。 なるほどなるほど。 実際に経験はないけれど、ラノベや萌えアニメを崇拝している俺の頭の中に、彼女の表情と指示された内容の二つの点を結ぶ、一本の線が浮かび上がった。 来たんだな。 俺の春が。 キスか? 接吻というやつなんだな? 俺がギルドハウス建設に尽力したご褒美的な! お姉さんからの的な! 「ん――!?」 「ん……ぅん……」 しかし、それ以上の思考の時間は許されなかった。 彼女の唇が俺のそれを塞ぐと同時に、それは俺の思考にさえも覆い被さってきた。 「ちょっと……」 目を明けた俺の前には、信じられない光景が映し出されていた。 誰もが憧憬を抱き、そして見るものを怯ませてしまう厳ついライカアーマーを、彼女は静かに脱いでいく。 「白君、あの……あまりこっち見ないでくれる? 恥ずかしいから」 いや、マスター。あなたは一体何をしているんですか? そんな言葉はもう出なかった。 俺はゴクリと唾を飲み込む。 背中に冷たい物が、ひとすじ流れるのを感じた。 「あ、あの……マスター」 「んん?」 今言えばまだ引き返せる。 ログインするのが楽しみで仕方がなかった、あの輝かしい日々は戻らなくとも、俺達の前から去っていった仲間は帰ってこなくとも。 少なくとも、きっとまだやり直すことはできる。  だがしかし、冷静な考えをよそに、彼女の裸体を目の当たりにした俺のグローリーセイバーは、これ以上ないというぐらい硬くそそりたっていた。
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