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「エルティさん、わたしは今女のシックスセンスと言いますか、なにか身の危険を感じました……うら若き婦女子の貞操の危機です。さっきから全身を舐め回すような、ねちっこく、且つ鋭敏な視線にグサグサと突き刺されていた気配を感じてはいましたが、それはさてさて合点がいきました。許してください。堪忍してください。見られるだけならわたしは堪え忍ぶ所存です。そうですか。わかりました。あなたは変態ロリコン紳士ですね!」
「…………」
「…………」
てうか、息継ぎなしだった。
このガキは……
「あのなぁ、確かに俺は紳士であることは認めざるを得ないけれども、断じて変態でもロリコンでもないからな。大体が初対面の人間に対してなんだよ? お前は少し自意識が高すぎるんじゃないか?」
「はぁ? 紳士は紳士であることを声高に叫んだりはしませんから。それに、お前って呼ぶのをやめていただけませんか。なんですか? 紹介されただけで、もう自分の女気取りですか? 年下の女子高生を釣り上げておいて、もう餌を上げないつもりですか!」
なんというか、相性ピッタリだった。
「誰が釣り上げたって? 俺は竿を垂らした覚えすらないよ。お前が釣り上げられた魚だと言うのなら、跳ねた勢い着地場所を間違えて、迂闊にも川の畔(ほとり)でうたた寝をしている俺の前に落ちてきた。が正しいだろ」
「会ったばっかで仲良いねえ」
エルティさんは楽しそうに眺めている。
確かに俺はこういった小気味のいいラリーは嫌いではないし、楽しくはあるのだけれど、こういう状況下で一軍の将が取りうる選択肢は、仲裁の一手がセオリーだったような気がする。
まあ楽しそうだし、いいんですけどね……
「とにかく!」
猫神猫は殊更大きな声を張り上げ、俺に背を向ける。
遠心力でスカートの裾が、ひらりとひるがえった。
「…………」
「白さん、これからもわたしと仲良くしてくださいね」
彼女は俺に振り返り、ペロッと舌を見せた。
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