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「決裂って……」
あんた耳元で何言ったんだよ!
それでも仕方がない。
ここに来た時点で、こうなることは覚悟の上だった。
俺は一応戦力差を確認する。
相手はレベルカンストが三人。
カンストというのはカウンターストップ。
即ち、ライフォールの世界で定められたレベルの上限値のことだ。
こちらはといえば、猫神猫は今にも倒れそうで、戦わせるなんてとんでもない。
チェリーさんとエルティさんはカンスト勢の九割、俺はその二人の半分強のレベルしかない。
ただこれは単純なレベル差の話だ。
装備差を考えると、最前にチェリーさんが言ったように、勝負をするなんて考える方が愚かなのかもしれない。
もっとも、ゲームの中でキルされたところで死ぬわけではないし、構わないと言えば構わないのだけれど、それでもペインシステムもそうであるし、何よりキュート極まる女子二人を放って逃げるわけにはいかない。
「白君、猫ちゃんとエルちゃんを頼んだよ。僕が時間を稼いでみる」
「俺も戦います。それにエルティさんだってまだ」
「駄目だ。君では一撃でキルされてしまう。それに、エルティは絶対に戦わせられない。絶対にだ!」
「え?」
あまりに力強いその一言に、俺は返す言葉を失ってしまう。
俺に背を向けたチェリーさんは、馬鹿みたいに刀身の長い日本刀を一振り構えていた。
彼は俺に振り返る。
「いいから早く行くんだ。ああ、そうそう。大事なことを言うのを忘れていたけれど、僕の亡骸はしっかりと拾ってよね」
「チェリーさん……」
いつだかと同じように、俺に片目を瞑って見せた目の前のキザな男を――
不覚にも俺は、格好いいと思ってしまった。
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