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俺は静かにエルティさんと猫神猫の元へ近寄る。
「俺の話を聞いてください」
時間がない。
作戦の全容とまではいかなかったが、しかし上っ面だけは説明できた。
「そんな、無茶苦茶です。第一失敗しては、早晩あなたは無事では済みませんよ?」
体力の自然回復もあるのだろうが、猫神猫が思っていたより元気なことを確認して、俺は少し胸を撫で下ろす。
「それは覚悟の上だ。どうせこのままでは全員やられる。ならば、一か八かではあるけれども、やってみる価値はあると思う」
「でも」
猫神猫はエルティさんの判断を仰ぐように、彼女の顔を見る。
俺も彼女に倣い、エルティさんの目を見つめた。
「頼りない策かもしれませんが、俺を信じてください」
「わかった。この命は白君に預けたよ。ギルドマスター権限で命令します。全員を守ること。あたしは白君を信じる」
これより心強い言葉もなかった。
「任せてください。それでエルティさん。今伝えた策のほかに、もう一つお願いがあるんですが」
「何でも言って」
「それじゃあ、鞄の中身を見せてください」
俺のお願いに、目の前の女子二人は声を揃える。
「は?」
「は?」
二人の目はすわっていた。
ていうか、そんな目で命を預けている人間を見るのはやめてください……
しかし、俺の目算は見事に当たった。
いや、これに関して言うのであれば、予想以上の収穫だった。
エルティさんの持ち物の中には、この作戦の成功率を飛躍的に上げるアイテムが入っていたのだ。
危ない危ない。
絶好調の猫神猫だったら、女子の鞄をおもむろにごそごそと漁る行為に、俺はどんな変態扱いをされていたことか。
猫神猫が怪我をしていたことで俺の名誉が救われるなんて、これもある意味、怪我の功名と言ってもいいのではないか。
俺は不謹慎にも、そんなことを考えてしまった。
「さて。そろそろ行きますか」
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