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「白さん」
立ち上がった俺を、猫神猫が不安そうな顔で見上げる。
「大丈夫。こう見えて結構自信はあるんだ」
俺はもう一度腰をおろし、座り込んだ猫神猫の顔の前で、精一杯の虚勢を張る。
「いえ、そうじゃなくて。どうしてですか?」
「ん?」
「わたしがキルされれば、それで済む話じゃないですか。終わる話じゃないですか。理由も自業自得なんですし。それなのにどうして?」
猫神猫の目からは、何かがひとすじだけ頬を伝っていた。
「俺に紹介してもらうために急に呼び出しちゃったんだ。半分は俺の責任だし。レベルも装備もダメダメな俺ができることといえば、精々お前の代わりに死んでやることくらいだよ」
「白さん……」
それに、まだしていないことがあった。
俺はそれを口にする。
「さっきお前は言っただろ? 仲良くしてくださいって。俺はあのときお前のキャラに圧倒されて、返事をまだしていなかった」
「そんなの……忘れましたよ……」
そう言った彼女の声は、小さく聞き取るのがやっとだった。
「だから今返事をする。俺こそ、これからも仲良くしてやってくれ」
彼女がコクンと頷くのを見て、俺は立ち上がる。
お前と呼ぶのをやめてくれ――
そんなことを彼女はもう言わなかった。
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