アポフィライト

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「いやぁ、派手な負けっぷりだったねぇ。はっはっは。見ていて気持ちがよかったよ。でも君、あいつとは五分じゃないよ」 いや…… まず、あんた誰ですか。 俺の目の前に立っていたのは、金色の短髪に、薄い黒のサングラスをかけた、チャラい男だった。 陽射しを浴びて眩しいほどの白いシャツは、胸元までざっくりと空いている。 こういうのも、ステレオタイプと言うのだろうか。 なんというか、軽薄を絵に描いてみろという問題があったとすれば、実際七割の人間がこの人を描くのではなかろうか。 それほどわかりやすいチャラ男振りだった。 「あの、失礼ですけど」 「あぁ、こりゃ失礼。僕は、道程(どうてい)チェリーというんだ。初めまして、二刀流剣士さん」   そう言うと彼は、俺に片目を瞑ってみせる。 芝居がかった言い回しと、こういったキャラにありがちなキザっぽい喋り方だ。 それにしてもこのキャラで道程チェリーって…… 風刺を効かせているのか? 「俺は白と言います。初めまして。それであの、さっきあなたが言っていた、俺とあいつとは五分じゃないっていうのは、一体どういうことなんですか?」 「うん。君は見たところ、ギルドに所属していないみたいだけれど」  「ええ。ソロプレイヤーですけど」 「じゃあ、ギルドステータスなんて言葉は知っているかな?」 俺はその言葉を聞いて得心がいった。 ギルドステータス。 ギルドと呼ばれる組織に所属することで、個人のステータスに恩恵を受けることができる、このゲームに限らない比較的メジャーなシステムだ。 同じレベルであるにも関わらず、俺とあいつの間に感じた被ダメージと与ダメージの差はそれだったのか。 確かに、あいつの腕にはギルドに所属している証しでもあるバッジのようなものがついていた。 あの糞野郎が口にしていた[腕の差]とやらは、確かに存在していたわけだ。 「どうりで。納得がいきました」 「君は強くなりたいかい?」 「まあ、弱いよりは」 道程チェリーさんは、そこで片方の口角だけをクイッと上げる。 「それじゃあ、君が今するべきことは一つじゃないか」
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