アポフィライト

6/8
前へ
/473ページ
次へ
アポフィライト。 確か宝石の一種だったかな? 俺はそういった事には、とんと疎い。 「はじめまして。俺は白と言います。道程チェリーさんにはギルドに誘われていまして」 後ろめたい思いもあり、俺は彼女の顔を正視することができなかった。 「それで、白君はアポフィライトに入ってくれる?」 「いや、エルティさんのギルドはどんなギルドなのかなって? あはは」 自分の意志の弱さに、ため息が漏れそうになる。 おい白よ。 お前はさっきまで断る理由が何ちゃらとか、孤独風を余すことなく吹かせていたじゃないか。 いくらお前のドストライクの美女に誘われたからといって、それはないだろ。 いや。しかし待てよ白。一匹狼だとか、孤高のソロプレイヤーが格好いいだなんていうのは、精々が中学生くらいまでの発想だ。 そうだ。俺はもう大人で、直に控える誕生日を迎えれば酒だって飲める。 よし、決めた。 エルティさんの答えが、少しでも俺の琴線に触れることがあれば、迷うことなく首を縦に振ろう。 「君は存外面倒臭い性格をしてるんだねぇ」 覚悟を決めた俺に返ってきた言葉は、そんな素っ気ないものだった。    ていうか、道程チェリーさんだった。       「あんたなに人の心読んでんだ! スキルですか? 奥義ですか? どのジョブを選択したら読心術が身につくんですか!」   「いやぁ、ごめんごめん。まだ序盤だし、僕のキャラが定まっていないからいいかなと思ってさ。はっはっは。今度からは読まないように気をつけるよ」 「…………」 今度からはって、チートキャラにもほどがあるだろ……   存外どころか一番面倒なのは、あんただよ。
/473ページ

最初のコメントを投稿しよう!

244人が本棚に入れています
本棚に追加