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「いやぁ、話を遮ってしまったね。もう黙っているよ。僕は本来無口なんだ」
口から生まれてきたであろうグラサン金髪は、しれっとそんなことを言う。
「本当にチェリーは黙っていてよ。どんなギルドかって話だったよね」
エルティさんは俺に向き直す。
「ええ。例えば決まりごとだとか、あるいはLPのノルマだとか、あるところはあるって聞きますけど」
ライフォールの世界には、地面と空を連結させているかのようにそびえ立つ70階層のメインタワーがある。
もちろん最初は1階層から始まり、各階層主を倒しては上層階に上っていくというシステムだった。
当然、各階層にはモブが生息しており、モブを倒して得られる収集品は、LP(ライフォールポイント)というポイントに交換することが可能だった。
LPはこの世界での仮想通貨であり、装備品を始め、何をしようにもまずはそれが必要になる。
そのLPをギルドに納品することで、ギルドステータスが上がっていくという仕組みだ。
他にも定められた一定額を納品することで使える機能が増えたりと、ギルドを運営していくのに必要なものだった。
故に、このLP納品は年貢の如くノルマ制になっているギルドも少なくないと聞いたことがあった。
「LPノルマはないんだけれど、どんなギルドか、ね。うーん……」
「…………」
ギルドマスターというのは、言い換えればチームリーダーだ。
そのリーダーたるエルティさんは、腕組みを始める。
「ふむー」
「…………」
「待ってね」
「…………」
「チェンジザワールド」
…………
ストップザタイムって言いたかったのか?
目の前のギルドマスターは世界に変革をもたらしたあと、自分のギルドのセールスポイントを探すべく腕を組み、上を向いたり下を向いたりで、そのまま十五分間悩み続けた。
大丈夫かこのギルド……
いや、俺としても条件というか、ノルマ的なものはないに越したことはないんだけれども。
別に、メリットと呼べるものを欲しているわけでもない。
それでも何かないのかな?
やはり断ろう。
俺が断りの言葉を口にしようとした、まさにその時だった。
彼女がすっと顔を上げる。
「え?」
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