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「どうしたんだい?雄なら雌のあたしを負かしてみな!」
「ッ...」
流石にこのまま成すがままにされるのは我の沽券に差し支える。幾ら相手が大婆様であろうと自分の誇りには変えられない。決心が付き未だ少し痛む横腹を押さえ立ち上がり、大婆様を睨みつける。
少しは効き目があるかと思ったがそれは大きな間違いであり我の過信だった。というよりも寧ろ嬉々とした表情で我を見据え、再び臨戦体勢。
「グォォッ!」
雄叫びを上げ容赦無く爪を振るう我に大婆様は再び不敵な笑みを浮かべ軽々と避ける。遅れをとらぬよう竜ならではの優れた反射神経を駆使し追撃する。
しかしやはり大婆様は相当な手練...と言うよりも我とは違い経験則なのだろう、我の攻撃を予測しておりまたしても爪は空を裂く。
「...争いを嫌う雄だって聞いていたけど、それは本当なんだねぇ」
「...?」
「殺気が無いって事さ。表面で本気で爪を振るっているように見えていてもお前には”お前を殺す”という確かな殺意が無いんだよ」
我に殺気が無い。
大婆様は暗にそれが我の弱点だと言わんばかりの口調だった。確かに我に軽々と相手を殺すなど決められる訳が無い。それは本来竜が持っている当然の感情で、それが我には無い。
それが問題だと言いたいのだろう。
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