弐章~地獄を超える地獄~

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「成程...。主も中々に純粋な眼をしている。彼の賢竜を退けただけの事はあるという事か...」 「そう言ってもらえると光栄ですけれども、私は其処まで大層な存在ではありませんよ」 「いやいや。長年生きてきた儂でも其方の器を覗く事くらいは出来る。主は本物だ」 国王を目の前に些か緊張し過ぎているローズは謙遜する事で何とか言葉を紡ぎだした。我的には国を救った英雄的な存在なのだからもう少し堂々としていても良いのでは、とも思ったが彼女の性格上それも無いかと自己完結に終わった。 ふと国王と彼女が小声で何かを話している事に気が付き耳を傾ける。 取り分け耳の利く竜ですら何を喋っているのかが聞き取れきれないが、どうやら国王は賢竜を退けた報酬の話をしているようだ。 彼女は少し考えた後蚊が泣くような声で何かを言っているが流石に其処までは聞き取れなかった。 「アルド。終わったよ」 「ん...。一体何を話していたのだ?」 その質問に彼女は少し声を詰まらせていた。そして困ったように国王を見ると彼も微笑ましそうに見ているだけである。 振り向き直った彼女は顔を少し紅潮させ「今は秘密」とだけ言われた。 ...本当に何なのだ。
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