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「その事はアルドに?」
その言葉に彼女は首を横に振り「出発したら話す」と言う。
今アルドにそれを言わないのはきっと彼に今余計な事を考えさせたく無いのだからだろう。それは消極的な彼女なりの気遣いだったが、私は改めて彼女が私達の味方だという事を信じられた。
「...和んでいられる時間も後少しだから、今の内に気持ちを楽にさておかないと」
「......どういう事」
「...」
彼女の意味深な言葉にその真意を確かめようとしたが、彼女はそれ以上を語らない。沈黙した空間で気不味くなっている所にタイミング良くアルド達が此方にやって来る。
どうやら話したい事は全て打ち明けたようでアルドの眼は元の輝きを取り戻していた。
「ローズ、菖蒲。待たせたな」
「お別れは済んだのね」
「アルドは泣き虫だからなぁ。俺が慰めてやっただけさ」
「おい!」
アルドは待たせてしまった事を侘び、私を抱きしめる。私も負けじと彼の首の後ろに前足を添えて抱きとめる。
その様子を見たイグリスが軽くアルドを誂うとアルドは赤面し、イグリスに怒鳴りつけ彼の前足が身体から離れるのを見て私は少し寂しくなった。別にイグリスに嫉妬している訳では無いけれども、雄同士にしか無い何かがあるのかと妄想に浸ってしまい何だか虚しい。
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