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「...もう構わない?」
「ん...。ああ、済まないな菖蒲。もう平気だぞ」
待ちくたびれたのか諭すような物言いでそう告げると彼女はさっさと目的の里とやらの場所に向かい始める。置いていかれないようにローズを呼び慌てて追いかけ始める。
「...彼女、貴方を大婆様に合わせたいって言っていたの」
「何...?だが一体何故何だ?」
「さぁ...。私も理由までは訊いてない...と言うよりも答えてくれる気がしなかったから訊かなかったのよ」
大婆様...。それは恐らく此の土地を律している者に与えられる証なのだろう。その象徴とも言えるだろう者が顔も見た事の無い我のような一竜に何の用があると言うのだ。正直大婆様と会う事にはあまり乗り気では無い。昔、父から大婆様はそれはそれは恐ろしく荘厳な存在だと言われた事があるのであまり良い印象は持っていないのだ。
しかし今愚痴を垂れていても既に此処まで来てしまったのでどうしようもない。このまま菖蒲を放って何処かに行く訳にもいかんしな。
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