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「...薄気味悪いわ。沃竜って確かに不気味なイメージはあるけれど...気分まで悪くなりそうね」
「我は普段暗い場所に居たから余り感じはしないな...。確かに暗闇に慣れていないと怖いよな」
怯えた様子で訴えかけてくる彼女を慰めながら一言も語らない菖蒲の背中を追っていく。
我達が今通っている場所は何やら舗装された地面のようで、ヴァンダルに居た時に踏みしめていた石の地面の感覚だ。
辺に生き物の気配は感じられずとても侘しい雰囲気であまり良い気分になれない中、我の隣に
居るローズの存在がそれを消し去る。
_____...ローズには助けられてばかりだな。我も何時かは......。
「...着いた。此処が大婆様の屋敷」
「...ヴァンダルにあった”キュウデン”とやらに似ているな。成程、位の高い者は豪勢な建物に居るのが常のか」
「...強ち間違いでは無いわ」
思わず口から出たぼやきに菖蒲も確かに、というような顔で頷きそう答える。ふと菖蒲と目線を合わせるとまるで”先に入れ”と我に伝えているように思えて取り敢えず目前にある巨大な扉に前足を添える。
「お前は来ないのか?」
「...私の役目はお仕舞い。後は自分で行きなさい」
「...そうか。行くぞ、ローズ」
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