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第10章 迷路の底
温かかった。
そして、解き放たれたように大きな安心感に包まれた。
だがやっぱり昨夜、吐露するように心情を話し、
挙句に彼の胸で泣いた自分が、どうにも信じられない。
そして、その腕の中で言われた言葉。
君の笑顔を奪う全てから、守らせてほしい。
だがこれが、空耳でも那々の聞き違いでもなかったのは、
更に言われた彼の言葉で確認できた。
月食に沸くベランダとは対照的に、
彼の腕の中で泣いていた那々の涙が引いてきたのを感じ取るように
彼女を包んでいた腕がそっと緩められた。
「大丈夫?」
頭上から、優しい声が降ってくる。
だが、さすがに顔は上げられなかった。
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