第10章  迷路の底

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そして、目の前の彼は、それに気付いているのだろう。 「でも、もしそれよりも一人で少し落ち着きたければ送るけど……。 彼らには、少し酔って気分が悪くなったって言っておくから」 結果、「安心して」と付け加えられたこの言葉に、 自然と頷いてしまっていた。 しかし、帰る先は隣だし、送ってくれるという好意は丁寧に断った。 だが、それでも彼は、 「じゃあせめて、ここのエントランスまで」 そう言って、そのまま立花たちには何も言わず彼女を送り出してくれる。 「あの、すみません。せっかくご招待頂いたのに……」 豪華なエレベーターに乗って間もなく、呟くように那々は言った。
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