第10章  迷路の底

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しかし隣に立つ彼は、項垂れ気味の彼女に淡く苦笑を向ける。 「さっきから謝ってばかりだ」 「それは、だって……」 思わず顔を上げた彼女の目の前で、彼の苦笑が、ふわりと微笑みに変わった。 「君は、何も謝る事はしてないから。 だから『すみません』は、もう終わり。それよりも……」 そう言った彼が、ふと微笑みを消す。 そして、 「僕は、本気だから」 真剣な面持ちで言う彼の目は、それでもすごく優しかった。 しかし那々は、答えることもできず、ただ俯くしかできない。 そして間もなく、二人は地上に降り立った。
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