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「あの、えっと……、ありがとうございました」
那々は、他の言葉も思いつかず、朝比奈にペコッと頭を下げる。
すると、その頭上から、
「急いではいない。でも、いつか君の気持ちも聞かせてくれたらと思う」
どこか切なげな声が、微かに掠れ気味に静かに言う。
そんな言葉に、那々は反射的に頷いていた。
「気を付けて」
とうとう顔を上げられないまま踵を返した背後から、
そっと彼の声が追いかけてくる。
それに、少しだけ振り返り再び頭を下げた。
しかし、直之にしても朝比奈にしても、
すぐに答えなど見付けられるわけはなかった。
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