カルテ12 『どうして欲しい?』

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その言葉を選ぶのに、一瞬の躊躇いが見えた気がした。 「緒方君?」  見上げると、緒方君の優しい笑顔。 どうぞ、とわたしの背にそっと手を添えた緒方君は、リビングに促してくれる。  この絵のことは、緒方君、あまり話したがらなそう。 それなら、これ以上何か聞いては悪い。 わたしは、絵の話は切り上げた。  けれどやっぱり気になって、リビングに入る前にもう一度玄関を振り返った。 画は、まるで誰かを待つようにひっそりと佇んでいた。  やっぱり、どこかで観たことがあるような気がするの……。  フローリングの床が拡がるリビングは広くて、綺麗に片付いていた。 というより、家具も物も少なかった。 大型ハイビジョンテレビ、ゆったりと座れるデザインの一人掛けソファーと大きなカウチソファー、ガラス天板のお洒落なテーブル、そして、ワイングラスやロックグラス、ウイスキーが小奇麗に納まったサイドボード。  広いリビングの奥にはサービスルームのような一角があった。 そこは本がびっしり詰まった大きな本棚があり、そこに置かれたデスクパソコンと調べかけと思われる本が平積みされていた。
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