カルテ1 可愛くなんてなれなくて

2/13
前へ
/192ページ
次へ
「ちょっと綺麗だからっていい気になって選り好みしてるから行き遅れるのよ」  あまり好意的とは思えない噂話。 悪いけど、全部聞こえていますから。  カフェで偶然居合わせた友人二人。 ううん、友人と思ったことなんてないけれど学び舎が一緒だったいわゆる〝ご学友〟ね。 街で会えば話しくらいはする。 けれど、今日は。  クライアントに会って、その後相手方の所へ出向き話しを聞いて、事務所に戻る前にちょっと資料をまとめようとカフェに入った。 そこで〝彼女達〟に出くわした。  場所を確保する為に窓際のカウンター席にバッグを置いた時、奥の方から囁く声がした。 「翠川さんだわ」 「あ、ホント」 「相変わらず綺麗で、バリバリ働いてますって感じだけど、結婚、してないんでしょ?」  さり気なく声のした方へ視線を走らせ、顔を確認した。  高校から大学まで同じ学校だった同窓生だ。 声を掛けるには微妙な距離。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

994人が本棚に入れています
本棚に追加