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 そしていつものように近所に住んでいた慶一を頼って家まで行くと、部屋へあげてくれてずっと寄り添ってくれていたのだ。だがあまりにも稀世が泣き止まないもんだから、慶一は頬にチュッとキスをしてくれた。『幸せのおまじない』そう言って。  その途端ぴたりと泣き止んだ稀世は目をぱちくりさせながら、にっこりと笑って頭を撫でてくれている慶一を見つめた。そのとき初めてときめく感覚を知ったのだ。  今でもはっきりとその光景を思い出せる。  この思い出は稀世にとっての心の支えで、思い出す度に今でもドキドキするが幸せな気分にもしてくれていた。  高校も大学も別々ではあったが社会人になった今でも毎週会うほど仲がよく、そんなことがあったからといってふたりの仲が変にギクシャクするということもなかった。
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