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平日の午前中。仕事中の稀世が電話をかけることなんて今までにないからか慶一は驚いている。
「あ、うん、そうだよね。初めてかも」
『どうした?なんかあったのか?』
緊張が声に出ていたのだろう。不意に慶一の声が固くなる。
「えっとね……仕事クビになっちゃった。ハハッ」
なるべく暗くならないようにと笑ったつもりが、乾いた笑いになってしまい逆効果になった。
『クビって……。なんで?理由は?』
「わかんない。でもたぶん俺の仕事ぶりが悪かったんじゃないかな……」
『だってお前最近よく褒められるって言ってたじゃないかよ。それに自分から辞めるならともかくクビってありえないだろ』
「うん……。でも……っ」
ダメだ。慶一と話すと甘えがでてきて泣きそうだ。
『今どこだ?家か?』
「うん……」
『待ってろすぐ行く』
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