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「おっと。大事なものを忘れるとこだった」  日曜日の夕方。出かける準備をしていた稀世は、借りた服の入った袋を危うく忘れそうになり慌てて寝室へ取って返した。  普段改まって出かけることがほとんどないせいか、ついさっきまで何を着ていこうかと散々迷っていたのだ。  志英から店の名前を教えてもらったあとどんな店なのかをネットで調べたら、そこそこ値段の張るレストランだということがわかり服装にも気を遣おうと新しい服を買いたいと思ったのだが、どんな服がいいのかもわからず、あわよくば買い物に付き合ってもらおうと慶一に相談した。  だが慶一にはそんな気を遣うことはないとすげなく言われてしまい、結局今持っている服でなんとか自分なりにコーディネートしたのはいいがなかなか決まらず、結局約束の時間ギリギリになってしまった。  もう忘れ物はないかと確認していると携帯が鳴る。どうやら志英がマンション下に着いたらしい。すぐに行きますと返事をすると、もう一度忘れ物の確認をしてから部屋を出た。
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