子供の頃のあの約束

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真っ暗な闇に包みこまれ、どこまでも堕ちて行きながら僕は何度も高橋に謝った。 「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」 「やってはいけないことをしてしまった罪悪感」に包まれ、どこまでも堕ちていく僕は、高橋が男たちに襲われ、ひどいことをされている姿を黙って見ていたことを鮮明に思い出した。 「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」 高橋も味わったのかもしれない恐怖心が、僕の心臓を張り裂けそうなほど激しく鳴り響かせた。 「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」 どれくらい時間がたったか分からないが、急に目の前がいつもの部屋に戻り、僕は吐き気と心臓の痛みでうずくまった。 涙が止まらず、罪悪感に押し潰されそうになっていた。 「ごめん…高橋…俺、お前と約束してたな…」 洗面所で涙と鼻水でグチャグチャになった顔を洗い、アパートを出た。 「俺…怖くて…あの時、本当に怖くて…」 外は真っ暗で、遠くで車の走る音が聞こえる以外、何の音もしなかった。 「俺…お前と一緒になるって約束してたんだっけ…幼稚園のときに結婚しようね…って約束したんだっけ…」 僕は歩き続けた。しばらくして、足の裏が切れて血が出ているのに気が付いた。 「あれ…? 裸足だったっけ…? ここ、どこ…?」 自分がどこにいるのかも分からなかった。 高橋との約束を守らなくちゃいけないという思いが、頭の中をいっぱいにしていた。 次の瞬間、目の前に電車が現れ、自分の身体がいくつにも分かれ飛び散り消えていった。 気のせいかもしれないが、体操着を着てぐちゃぐちゃになった口を剥き出しにした高橋が泣きながら笑っているような気がした。
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