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静かになったスマホを放して、私は身を守るように毛布を引き寄せる。寒気に取り憑かれた。
違和感が、全く無かったわけじゃない。私への過度な真白の執着心にも。はっきりとした交際宣言も無いのに、ただ“結婚”とばかり唱えていた、彼の言動にも。
それでも、純粋な想いだと信じた。その解釈が一番幸せで、そして、自然な気もしてたから。
「誰と話してたの?」
布団の中で、異常なほど肩がびくついた。
扉の方に目を向けると、壁に背中を預ける格好で、真白が立っていた。
「いつから……」
「ずっといたよ」
女神も小悪魔も羨むような、艶やかな顔で笑う真白。
足音も立てずに近付いてくる彼が、怖い。
怯えを覚えながらも、愚かな私は動けない。目を逸らせない。間近に迫る、綺麗な形の瞳から。
「今の電話、誰から?」
「えっと……」
「まさか僕に言えないような相手?」
急激に低く下がった瞳と声の温度に、私は焦って起き上がって、真白のシャツにしがみつく。
「違うの! 律だから!」
彼の疑いを必死に否定した。
「真白に言えないようなこと、私、何もしてないからっ……!」
見捨てないで。見放さないで。泣きそうになりながら、私は彼の胸に顔を埋める。
「お願い、信じてっ……」
「ああ、うん……それは信じるけど……」
珍しく呆けたような声を出す真白は、私の肩に優しく手を置いた。
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