甘美な呪い

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 そして。 「ねぇ、りっちゃん。僕以外の男の子に物貸したりとかしてないよね?」 「してないよ。仲良い子もいないし、たまに律と教科書の貸し借りしたりするくらいで……」  話をしてる最中に、急に、視界が変わった。  眼前には目を閉じた真白の顔。後頭部には、抗えない強い力。そして、ねっとりとした熱い感触が、唇の中に、強引に割り込んでくる。  状況を把握した直後、私はぎゅっと目を瞑った。 「んっ……!」  全てを飲み込むような強烈な感覚に壊されないよう真白の制服にしがみつく。口内で激しく暴れ回る彼の舌に、まともに応えることも出来ずに。  口先の快楽に身を委ねると、他のことはどうでもよくなってしまう。もう、何も考えられない。  お互いの触れ合う温度が同じくらいになった頃、ようやく真白は私を解放した。 「……ごめんね。僕のこと、嫌いになった?」  また少し首を傾けてからの、少し弱気な上目遣い。熱の冷めてない、うっすらと蒸気した頬。  私は緩やかな動きで首を左右に振る。息を整えるのも辛くて、それが精一杯の返事だった。 「良かった。りっちゃんには、僕に夢中でいてほしいから。他のこと考える隙なんか無いくらい」  妖艶な笑顔が、何度でも、私を奪っていく。 「りっちゃんは僕と結婚するんだから」  毎日、呪いのように、同じ台詞を吐く真白。  もちろん、呪いでも、私は構わない。一時もぶれないまま、いつだって、私の心は彼に支配されることを望んでいるんだから。
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