甘美な呪い

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 でも今度はスマホだった。スマホの着信音が、私を現実に留まらせた。  疎ましく思いながらも枕元に手を伸ばして、着信相手も確認せずに、私は“通話”のアイコンを選ぶ。 「もしもし……」 『理沙? 急に悪いな。今、大丈夫か?』 「ん……大丈夫だよ。律……」  機械を通じて伝わる声は、何年も身近で耳にしてきた片割れのもの。いくら寝ぼけてても、私が律を間違えることは有り得ない。 『なーんか、ぼーっとしてんなぁ。もしかして寝てたのか?』 「いーじゃん……今日は久しぶりに予定が無い日だもん。それより、何か用?」  話してる内に意識がはっきりし始めて、目を擦りながらそう切り出す。 『ああ、こないだそっちに荷物送ったんだけど、そろそろ届いたかなーと思ってさ』 「荷物? あ……もしかして、さっきの……」 『無事に届いたんだな? 良かった』 「何? プレゼントでも送ってくれたの?」 『ああ。お前らの結婚祝い。弥生と共同でな』   ドキリ。現実を知らしめる単語に、一気に鼓動が跳ね上がる。思い切り、激しく。 『改めて、おめでとう』 「……うん……ありがとう」  律から真面目な祝福を受けると、なんとなく照れてしまう。  私はもっと遠いの未来のことだと思ってたけれど、真白が急ぎたがった。お互いの両親に土下座をして頼み込むほど。  もちろん皆、最初は難色を示してたけれど、最終的には私も含め、彼の熱意に押し切られた。  高校を卒業した直後、真白と私は籍を入れた。最初の約束通り、彼は、“雨谷真白”になった。
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