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「この事はお母さんやお父さんには秘密だよ…他の人にも言っちゃだめだからね」
アパートの隣の部屋に住む、当時お兄ちゃんと呼んでいた男は、裸だった私の体にシャツを着せ、微笑んだ。
「う、う、うん」
私は泣きそうになるのを堪えながら、必死に頷いた。
「約束だよ」
男は小指を私に向けて突き付けた。
「う…うん」
私は大きな男の小指に、自分の小指を絡め、約束を交わした。
これは私が八歳の誕生日を迎えた翌日の事だ。
急いで服を全て着た私は、男の部屋から飛び出し、隣の自宅に駆け込んだ。
そしてただいまも言わず、こたつの中に身を隠し、口を抑えて泣き叫んだ。
それに気付いた母は、こたつの中を覗き込み、私の頭を優しく撫でた。
私はこたつから飛び出ると、母に抱き付き、無我夢中で泣き叫んだ。
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