第16話ー抜けば玉散る、氷の刃ー

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「恩にきる。」 「見てくれはほぼ同じだが、性能は段違いだ、心して使えよ。」 「…あぁ。」 握った刀は、やけに重く感じた。 ブン… 軽く振ったつもりだった。 ビシッ!! 「!」 大木が、意図も容易く斬り裂けた。 バキバキ… 「こ、ここまでとは…叢雨真打、凄い!」 若槻は開いた口が塞がらなかった。 ドシャァァ…ン。 「…悪くない。」 チキリ、と鞘へ納める。 「…強くなったな、レオン。」 「あぁ。」 「あの頃みたいに、危なっかしい眼じゃ無くなった。良い仲間に出会ったみたいね。」 逢沢は柔らかく微笑みかける。 「…また、寄る。」 「あぁ、達者でな。」 「え?もう帰るの?もう少しゆっくりしても…」 「早く刀を身体に馴染ませたい、性能が上がってる分俺のイメージと調整しておかないと…まだズレがある。」 逢沢はクスリと笑う。 「根っからの武人気質だからな、この男。宜しく頼むよ、凛花。」 「あ、はいっ!!」 「何か相談があれば、いつでも来ると良い。」 「はい、また来ます!」 レオンは特に挨拶するでもなく、帰路を行く。 「もう、レオンくんはまたロクに挨拶もせずにー…」 「いいんだ、凛花。」 「…そう言うわけにも…」 「いいんだ、」 見守るその目は、母親のようだった。 「アイツはあぁやって大きくなった背中を見せる事でしか、礼が言えんのさ、慣れたよ。」 「逢沢さん…」 最後に、ウインクで返した。 「惚れた男は、逃がすなよ?凛花。」 「なっ!?なななな!」 「ハッハッハ!分かり易いヤツだ。」 「し、失礼します!また来ます! …待ってよレオンくんー!!」 そうして、騒がしい2人は帰って行った。 「…さて、今日は鹿肉にするか。」 カタン、とツリーハウスに帰る。 「全く、昼飯も3人分作ったんだがなぁ…」 少しだけ、ほんの少しだけその背中は寂し気だった。
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