1人が本棚に入れています
本棚に追加
と、いうのも、私には既に渡るための目星というか………理由付けになるものが頭のなかにうっすら浮かび上がってきていた。
「このはしは渡ることができません」
その立て看板を見たときに、ふと記憶の隅から思い出されてきた昔話がひとつあった。
えーと、なんだっけかあのハゲ。名前忘れたけど、頭を人差し指でぐるぐるするやつ。
………古畑任三郎?違うな、人差し指のアクションしかあってないや。まあ今はなんでもいいや。
とにかく屁理屈ばっかりこねてやりたい放題やるっていうガキが主人公のアニメがあったでしょ?
えーと、名前は、えーと………
思い出せないっ!し、どっちでもいいっ!
とにかくそいつが、アニメの第三話くらいでいってたことをなんとなくおもいだしたのだ。
「はしがダメなら真ん中をわたればいい。」
正直、んなアホなとは思う。思うけど、
今日は期末テスト。遅れたらもう洒落にならないし、この川はどのみち死んでもわたらないといけない。
たとえ泳いででも………ってカナヅチだからだめなんだけどね。
腕時計をみる。もう試験開始まであと五分もない!
瞬間で私は決意した。
真ん中わたる!
警察に怒られたらあとで謝る!
それで「はしがダメなら真ん中をわたればいいとおもった」と供述する!
それっきゃない!とりあえず試験受けれたらそれでいい!
私は、意を決してクラウチングスタートの体勢を取った。
一瞬で駆け抜けてやる。そもそも見られなければどうということはない!
数々の修羅場を駆け抜けてきた私の両足が唸る。腰がグッと上がる。右足が地面を蹴る。左足がアスファルトを掻く。全身が跳躍する、
すべての力が前方へと一直線に流れていくーーーーー
最初のコメントを投稿しよう!