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「大丈夫?」
私は自販機で買ってきたソフトドリンクを誠君に差し出した。
無言で受け取る誠君。
観覧車が一周するまで、誠君は私の膝をガッチリ掴んだまま、微動だにしなかった。
青ざめた顔に冷や汗までかいている。
不意に誠君が口を開いた。
「笑わないのか。大の男が観覧車ごときにって。」
大の男って、あんたどう見てもか弱き乙女だよ・・・とは口が裂けても言えない。
「誰でも苦手な物の一つや二つあるさ。それを笑ったりなんてしないよ。」
私にしては至極真っ当な事を言ったつもりだ。
すると、誠君は顔を上げて、そのキラキラした瞳で私を見上げた。
吸い込まれそうな瞳とは正にこの事だね。
ホントに男にしておくには勿体ない。
私が男だったらほっとかないね・・・あれ?誠君は男だから私は女でいいのか?
「ありがとう・・・」
多分照れながら誠君は一言言った。
顔を赤くして、また慌てて下を向いた。
・・・可愛いー!!
胸がキュンキュンした。
こりゃ、男でも放っとかないね。
彼の身が心配になった。
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