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「そうそう、高城先輩がまた探してたわよ。」
・・・またか。
すると、遠くの方から声が近付いて来た。
「い~が~ら~し~」
「噂をすれば影ね。」
他人事といった感じだ。
声の主は私の姿を捉えると、一直線に私目掛けて走って来た。
そして私の肩をガッチリ掴んだ。
「今日こそは、我がバスケ部に入ってもらうぞ!」
彼は高城孝、ひとつ上の先輩だ。
がっしりとした体格で、バスケ部というより、柔道着の方がよく似合うと私は思っている。
「だから断ってるじゃないですか。」
正直うんざりだ。
「君の身長と運動神経は我がバスケ部で活かされるべきだ。」
人の話し聞いてるのかなこの人。
だ~か~ら~
「バスケ部って、男子バスケ部じゃないですか。」
「そうだが、何か問題でもあるか?」
問題があるもないも、
「私、女ですけど。」
高城先輩はそんな事、というように、ガッハッハと笑った。
「君が女だとは誰も思わんよ。」
サラッと失礼な事言うな。
「そういう問題じゃないと思うんですけど。」
「そうかね。」
この人に正論は通じない。
「そろそろ部活が始まるな。」
高城先輩は腕時計をチラッと見た。
「まあ、考えておいてくれたまえ。」
絶対ないですって。
「また来るよ」
そう言うと、来た時と同じように、全速力で走り去って行った。
もう来るなよ。
一部始終を見ていた菖蒲が一言。
「桃ちゃんって、変態に好かれるわよね。」
あんたもだよ。
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